サニーならい

雨上がりの峠を越え、霧の立ち込める洗馬を抜け、奈良井へ。
大きな橋のある道の駅についてフラフラしていると鮮やかなブルーのサニートラックがやってきた。サニ太郎さんだ!

サニ太郎さんとは3月のウクレレ・サムシングで競演させていただいた。高音の美声で表現した旅の孤独が、ときどき道の駅を寝倉にする私の心に響いた。また、お使いのウクレレは長らくご自宅の納戸で眠っていたのを修復したとかで、他のウクレレでは真似の出来ない音を紡ぎだしていた。
演奏後に着ていらっしゃったTシャツについて聞いたところ「深雪」という工房で作っていただいたとのことで、奈良井にあるという。それじゃあうちから遠くない、近々奈良井に一緒に行きましょうと約束し、今回実現した次第なのだ。
一緒に奈良井宿を散歩した。
木曽路は全て山の中にある」とは島崎藤村の言。確かに奈良井はまだ肌寒く、観光案内所では石油ストーブが焚かれ、目の前の里山には雪が残っている。桜は咲き始めているけれど、山に囲まれたこの地はまだまだ春陽の恵みは届ききっていない。そのせいか、宿場は観光客がいるにもかかわらずひっそりとしていたように思う。

「深雪」さんの工房は宿場の北寄りにあった。上の写真、ちょっとわかりにくいけれど左側、白い布(これTシャツ)のかかっているところがお店。Tシャツだけじゃなく、巾着、木の団扇、ランチマットなどなど、かわいらしい笑顔の書かれた品々が畳の上に並んでいた。思い切って「ウクレレDeロックンロールのTシャツをデザインしてくださいっ!」て言おうかと思ったけど、ひで社長(「ひで社長」ってなんか「たこ社長」みたいw)に無断で作っちゃうのはよくないなあと考え、ぐっと我慢の子。5分ほど見ただけだったけど、どれも素敵なデザインの商品ばかり。次にきたときは買物しようと心に決めた。
工房を出て宿場を隅から隅まで散策。少しだけ晴れ間が覗いて通りが明るくなった。一眼レフ片手に興奮気味の外国人観光客、漆アクセサリーを覗き込んで楽しそうなカップル、方言で楽しそうに会話する木曽のおばちゃん。けれどやはり宿場はひっそりだ。いい雰囲気。
奈良井は馬籠や妻籠など他の宿場町よりも北に位置ているため、中部方面からの観光客はあまり訪れない。そのためか所謂「観光地ずれ」した感じがしない。ひっそりした佇まいはそこからくるのだろう。昔の風情を一番残しているのはここ奈良井なのだろう、と憶測した。
自動車が発明される前、人はこの中山道を歩いて移動した。険しく続く山道の先、僅かに開けた谷に広がる宿場町。旅する人の喜びと安堵はいかほどだったのだろう。
2時間ほど歩いて、駅で一休みして、サニ太郎さんとお別れした。サニさん、今朝上高地まで行ってきて、奈良井の次は岐阜へ向かうという。青いサニトラどこまでも。いい旅をしているなあ。
僕もまた道の駅を寝倉にして旅に出かけよう。あ、そのためにはまずアロハ買わなきゃね。