前に進めなくなった時には

耕運機が動かなくなり、パパタブがエンジンを直すというので、関ゲルと二人で手伝った。まあ私はまだまだエンジンのことがよくわからないので勉強ついでの見学で、パパタブと関ゲルの作業を見守っただけだけれど。

昨夜、畑の耕運機からエンジンを取り外して家へ持ってきた。真っ暗な中でのエンジン取り外し&運搬作業である。このご時世、端から見たらさながら金属窃盗親子に見えてもおかしくなかったと思う。
エンジンは鉄の塊だからずっしり重く、危うく肩が外れるとこだった。
初めて耕運機のディーゼルエンジンというものを見た。単純だとは聞いていたけれど、本当にわかりやすい仕組みだった。素人の私でもなんとなくわかるくらい。とはいえやっぱりそこは機械、わからないところはやっぱりわからない。それをスイスイといじくり「ここが悪いのか?いやここか?」と言いながら故障原因を探すパパタブ。こんなこともできるんだな、と見直した。
男なら農業機械くらい直せなくちゃな。ポンコツを直して得意げに「もったいない精神」をアッピールしたいものだ、と思った。
耕運機の故障原因は大体つかめたが修理には道具が足りないとわかり、修理は来週末へ持ち越しとなった。
関ゲルと私は関ゲルジムニーノジマ園へ。先週買ったウクレレ用の秘密兵器を有効活用すべく、コンパクトフラッシュを購入。
車に戻り駐車場の角を曲がろうとすると、真っ赤なボルボステーションワゴンが無理やり入ってきた。チョイ悪みたいなおっさんとバブル時代の習慣が抜けない40歳みたいな女が乗っていて、無理やり入ったのにごめんなさいでもない。ブオォンとエンジンを噴かして通り抜けていった。
関ゲル「でっけぇ車はわが者顔だな」
巻きタブ「くっそ、舗装してねぇ道なら負けねぇんだがな」
関ゲル「あれっ!?それ言っちゃう?それ言っちゃう?あーあ、じゃあ行きますか」
巻きタブ「行きますか?」
ギヤを四駆に入れた。
15分後、ジムニーは川原でスタックした。

路面の泥が削られて後輪が空転してしまう。前輪はしっかり石を掴んでいるが、デフロックが効いて動いてくれない。こうなると後輪の駆動で動かすしかない。ジャッキで持ち上げてタイヤの下に石を突っ込み、枯れ草を噛ませ、エンジン噴かして押しまくった。これを繰り返すこと数十回。
動いた!動いた!
またスタックした。今度は流れの急な浅瀬。危なくて押すことが出来ない。あたりは暮れなずんできて、関ゲルと私はお手上げ状態になった。
もう二人の力ではどうにもならない。こうなったら誰かに助けてもらうしかない。けれどここは川の中。舗装道路からは3キロも離れている。しかもこっちは完全にスタックしているから、相当力のある牽引車両がないと厳しいだろう。普通のSUVじゃあ無理だ。こうなったら最後の手段・・・。
JAFを呼んだ。
JAFマンは2トンレッカーで颯爽と現れた。現場に着くと手際よくレッカーのポジションを定め、牽引ケーブルをジムニーに取り付けた。リールをゆっくりゆっくり回す。すると今までびくともしなかったジムニーが、じわっ、じわっ、と前進しだした。
思わず声が出た。「す、すげぇ・・・や」
ものの10分でジムニーは走れる状態になった。JAFの兄さんは「いやーよかったですねえ」とにこにこしながら請求書を出す。「はい、ここサインして下さい」紙にプリントされた請求学は・・・・0円!
会員になっておいてよかった!年会費数千円でこの危機から助けてもらえるんだから、安いものだ。いや、本当はこんな迷惑をかけちゃいけないんだけど。未加入だった関ゲルも早速申込書をもらった。
来た時と同じように、JAFマンは颯爽と帰っていった。私たち二人は最敬礼で「ありがとうございました!」と頭を下げ見送った。2トンレッカーで去るJAFマンが、バイクで去る仮面ライダーのように見える。
私たちはへとへとで家へ向かった。アスファルトの道が嬉しかった。
JAFに入ったきっかけ、直接はパパタブに今年「家族割で安いから入れ」と言われたことだ。感謝。だけど理由がもう一つ。数年前ナタリーに言われた言葉が心に残っていた。

「ねえ、タブ君の家はJAF入ってる?」
「入ってないよ」
「え?入ってないの?いざという時助けられるから入っておいたほうがいいよ」
「そうかなあ」
「入りなって」
「うーん、面倒くさいなあ」

わかったこと。

  • 前に進めなくなった時には、自分で修理しよう
  • 前に進めなくなった時には、JAFを呼ぼう。
  • 前に進めなくなった時には、いつか聞いたアドバイスを思い出そう。

関ゲル「巻きちゃん、ほんっと今日はごめんな」
いいってこと。
日々、感謝です。