Get out of my cloud(一人ぼっちの世界)

皆わかってない。皆ぜんぜんわかってくれない。
感じたことを一所懸命伝えようとしているのに、どうしてみんなはわかってくれないんだろう。
ただ馬鹿みたいなタラコ唇顔をして腰を振っているわけじゃない。後のことは考えずDon't trust anybody over thirty(30歳以上のオッ様たちゃあ信じちゃいけねってことせ)と高らかに叫んだ若き日は遥か昔。年老いて皺くちゃの顔になって、それでも「アーゥ!」と裏声を出しながらステージに立つ。ジョギングとエアロビでツアー前に鍛えぬいた身体を誇示し、「どうだ俺の肉体美っぷりは、セクシーだろう?うわははは」とばかりにエアロビな動きを見せるミック・ジャガー。その「年老いながらもエアロビで鍛え、その成果を見せびらかすガキンチョっぷり」を私は物真似して踊っているのだ。タラコ唇は単なるアクセントに過ぎない。肝心なのはSoulなのだ。一所懸命伝えているのに、身体全体で表現していると言うのに!
皆わかってくれない。
真似しているのは長州小力ではないし、長州力本人でもない。ましてや春一番が楽屋で披露している長州力アントニオ猪木よりも似てるらしい)でもない。ベースは長州小力だけれど、単純に「きぇてないれすよ」と言ったって仕方ない。それは馬場さんの真似で「ふぉっ」と言うのと同じレベルだ。世間が持っている馬場の表象をなぞっているに過ぎず、実態は何一つ捉えていない(もっともナンシー関がいみじくも指摘したとおり、馬場さんの「でかさ」は意味を超越しており、実態が無いっちゃあ無いんだが)。私がやっているのは「長州力をこよなく愛しているあまり物真似をするようになった長州小力」である。だから言葉の節々に長州的な言い回しや人生観、プロレス観が顕れる。例えば「小力さん、最近テレビ出ないっすよね?」というフリが来たら「いや、おぇはきちんと出てますよウン。最近は地方に良く出てますよ。まぁアレだ、おぇにとっては(リングは)どこでも一緒だから。後楽園ホールだろうが地方だろうがやることは一緒ですよウン。やらないとかそういうアレはないです。ないな」と答える。「巻きタブさんはなんでウクレレでロックンロールするんですか?」と訊かれれば「関係ないですよ。要は、噛みとぅく気があるのかって、ウン。ウクレレがあって、ロックンロールで、やらないとかそういうアレは一切ないです。今しかないんですよ、おぇたちの時代は」と答える。ところが、だ。皆聞いた途端に「カツゼツが悪くて聞き取れない」だの「小力はそんなこと言わない」だの。知ったような口をきいてくる。わかってない、全然わかってない。私が表現しているのは小力の長州力に対する憧憬であり愛着であり嘲笑なのだ。何故わかってくれないのだ。みんな、全く以ってアレだ、ウン。
皆わかってくれない。
くそぅ、もう夜中だ。仕方ないので私はステレオで”Satisfaction”を鳴らし、一人今でエアロビを披露した。あ、もちろん障子は閉めた。となりの奥さんに見られたら恥ずかしいから。