夜が掴むホリデー

今日、本当にやることがなかった。
山登りの会は最初の目標だった常念岳を達成した後、ぴたっと活動が止まった。もう山は雪化粧しているし日も短いし、登る雰囲気でもない。
朝3キロほど走った後、洗車でも行こうか、と思ったら大雨になった。
体重が何故か1キロ近く増えていた。10分ほど筋トレした。
久しぶりにテレビをつけてみた。つまらなかった。消した。
ウクレレを3時間ほど弾いた。誰も聞いてなかった。
電話帳をいじくりあえそうな人を探した。東京にいる人、結婚した人、誘ったらはぐらかされた人、けんか別れした人、土曜日も仕事中の人、いろいろな番号が出てきたけれど、今電話して会えるような人はいなかった。いや、いたのかもしれないけど向こうの様子がわからないから、しなかった。
昼が過ぎた。頭の中にCKBの『7時77分』が鳴り始めた。

777

777

テレビをつければ高校野球
確かに人々はみな動いてる
する事のない僕には
他人に会う勇気もない
(中略)早くしなくちゃ 7時76分 7時76分
太陽の匂いだ 7時77分 7時77分
何か何かしなくちゃ

もう一回ウクレレを出して弾いて、昼寝したら夕方だった。
だんだん孤独に耐えられなくなってきたけれど、打開策は何にも無かった。思わず床に仰向けになった、何も変わらなかった。

つげ義春全集 (6)

つげ義春全集 (6)

つげ義春に『夜が掴む』という作品がある。いつも夜に掴まれることを恐れ窓を閉めて寝ている男がいて、付き合っている女性にその恐怖を訴えるけれど馬鹿にされるだけ。怒って暴力を振るっていたら浮気され、「出て行け!」と言ったら本当に出て行かれてしまったので「戻ってきてくれ、お前がいないとダメなんだ」と女性の下半身に抱きついて懇願するが聞き入れられず、女性は去ってしまう。男は一人アパートへ帰り突っ伏す。すると夜が開けっ放しの窓から侵入し、男の足を掴む、男は叫ぶ「うわーっ!」
夜が近づくにつれそんな気分になってきた。21時を過ぎてもやることは何も無かったので寝た。戸締りはちゃんとした。夜が怖かったからではない、雨だし寒かったからだ。