ようこそ!

ここ一週間、海外から取引先の方々が出張に来ていた。実務担当兼渉外窓口兼雑用兼会議進行兼接待係兼の私は滞在中、朝から晩までずっと一緒だった。
仕事柄普段は出張する側に立つことが多い。出張者を迎えるのは初めてだったので、何から何までわからないことだらけ。外国人のためのホテル手配、社外者の社内立ち入り可能箇所確認、会議室および休憩スペースの確保、接待申請、移動手段確保、お茶、珈琲、水・・・やらなければいけないことを挙げていったらキリがない。本当に面倒だし、いろいろ制約条件があるし、正直疲れた。現在下痢中。
反面、気づいた。自分が出張している時には、上に挙げたような物事の手配を現地側が全て済ませてくれているのだ。どうも出張を繰り返しているせいか、最近は送迎車もホテルも出張者部屋も食事も準備されているのが当たり前であるかのように感じがちだ。でもそうではない。準備されているということは必ず誰かが準備してくれているということで、準備の為に時間と手間が割かれているということである。多分ストレスで下痢になった人もいるだろう。
だけど考えてみると、学生時分に放浪の真似事をしていたころは全部自分で準備手配をしていた。言葉が自由にならない異国の地でバスを探し、安食堂を見つけ、宿と値段交渉した。だけど異国で衣食住を確保しようとすると本当に沢山のトラブルに見舞われる。行き先を告げ「オーケーオーケー」と言われて載せてもらったバスなのにガソリンスタンドで降ろされ、目的地までヒッチハイクしたこともあった。シャワーが出ないので洗面所で身体を拭いたこともあった。街頭の立ち食いサンドイッチ屋で激安サンドを貪ったら食中毒に遭った。
翻って現在、出張すると食事・住居・移動手段は常に手配されている。滅多にトラブルに巻き込まれることは無いし、食中りもしない。当たり前の様に感じてしまうけれど、実際には本当にありがたい事なんだなあと思う。今回出張者を受け容れる側に立って初めてこのありがたみを実感した。
あと、一つ思い出したことがある。アラブにいた頃、本当に沢山のアラブの人たちに助けてもらった。お返しに何かお礼をしようとするのだが彼らは頑なに何も受け取ろうとはしない。仕方なく諦めると、彼らは異口同音にこんなことを口にした。
「私たちにとっては(他人を助けることは)義務だから。そして貴方はこの地に来てくれたお客さんだから。お礼なんかいらないから、いつか日本で困っている人を見つけたら今度は貴方が助けてあげてください」
今回の出張者の方々は、一週間の滞在をどのように感じて過ごしたのだろう。