決めたこと

突然振ってきて、ゲロゲロ吐きそうな案件をずっとここ一週間抱えていた。あの手この手飴手に鞭手でお願いし倒し、メール攻撃電話攻勢、エイヤエイヤと毎日続けた結果、ゲロを吐かずに済んだ。案件は、なんとか平常化した。嗚呼、穏やか。
梅雨明け途端に夏真っ盛り。たまやたまやの大花火。実際はそんなに大きな規模じゃないのだけれど、仕事が終わって、広場から上がるその儚い光を眺めた。
いろんなことが起きる。他人の痛みを分れというけれど、人間が世界中の事件全てに心を痛められるようになったら一瞬で発狂するだろう。何より今、安堵しているのは人生のうちのたった一週間を占めた案件が解決したからだし、一瞬の花火を見ているからだ。本当はやらなくちゃいけないこととかかけなくちゃならない電話とかあるんだけど、そんな身近な他人の心の痛みは少しもわからず、己の安堵感だけに浸りながら「世界中の悲しみが」なんて言っている。そしてそれを書く。嗚呼罪深い。
だけど何てきれいな花火なのだろう。安堵。難しいことはよくわからないから、「何故今お前はここにいるのか?」と聞かれたら「そりゃあ、ここにいるってことになってるからでしょう」としか言いようがない。それでいいのかはよくわからない。ただ、目の前で踊る火花に心が凪いでいる。周りにたくさんいる見物客、全員素朴に見える。サラリーマン、土地の呪縛、縁故主義、狭い見識、単純な感受性、井の中の愛着、もう鳴いているのか鈴虫。帰りの車で決断したり考え事するのが嫌で、先輩を送って車内は馬鹿騒ぎ。いろんなものいろんなものいろんなもの。おもわず手にした塩化ビニールのペンギンを高く掲げ、消え行く花火に私は叫ぶ。「ぅえ〜いぅえい!」
ずっとここで生きていたい。ここが私の生きる場所だ。指すような昼の日差しが消えて、夜風がやさしかった。