約束

この時期になると、約束を破った人のことを思い出す。
決して約束を破る人ではなかった。私のために白内障の手術に踏み切ってくれた。カタカナだらけの子供だましの本を、わけのわからぬまま読み聞かせてくれた。屋根に登ると、危ないからとかんかんに怒った。私の気性の荒さを誰よりも心配していた。だから絶対に約束を破らないはずだった。
でも、約束を破った。金曜日の午後、明日は回転寿司を食べに行こうっていったじゃないか。
人はさいごのさいごで嘘をつく。それまでどんなに約束を守っていても、さいごには破る。破らざるをえなくなる。だから、朝起きて、今日も元気だったら、きちんと約束を守りたいなと思う。もうすぐ、祖母の命日である。