大人になるとわかること

「肉体は一日でも若返りたいけれど、頭の中は一秒足りとも若返りたくは無い」
この言葉を読んでから、リリーさんのファンだった。いや、嘘。本当は、「ポラロイド買ったら、男なら一番初めに自分のちんちん撮るでしょう。それをやらないということ自体が、何か欠落しているような気がする」て言葉からのファンだ。それはそれとして。

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

子供の頃のご馳走は、ナポリタンとマカロニグラタンだった。スパゲッティが台所で茹でられているのを見るとドキドキしたし、駅前デパートのレストランに行く時はグラタンのあるファミレスと決めていた。
おふくろの行動はいつも不思議だった。ナポリタンさえあれば何もいらないのに、畑で採れたトマトを出したり、変なサラダを作ったりする。それは大抵残って次の日の朝に出た。作らなきゃいいのに、と思った。
レストランではビーフシチューを注文する。おふくろは体が小さいからそれだけで十分足りるはずなのに、なぜかフライドポテトやサラダをたのむ。僕がマカロニグラタンを食べ終える頃、案の定おふくろは残してしまう。そして僕に食べていいよ、と言う。注文しなきゃいいのに、と思った。
いつからか、ナポリタンもマカロニグラタンもご馳走ではなくなった。ナポリナポリタンはないし、マカロニはご飯のおかずではない。そんなことがわかるようになった。そんな今になって、おふくろが何故あんなにたくさんトマトを切りつづけたのか、よくわかる。なぜ余計に注文していたのかも、よくわかる。今になってよくわかるから、悲しい。
そんなことを思い出させる本でした。