バーナム・ピアノ・テクニック

隠れたベスト・セラーなんていう言い方がある。あまりにどこの家にでもあるために「どのくらい売れているのか」ということが全く意識されない本のことを指すことが多い。キリスト教徒における聖書とか、家庭の医学とか大抵間近にあるのが当たり前すぎて「売られているもの」という属性が薄いものである新聞もこの範疇といっていい。ただし自分でお金を払うようになると新聞を「買っている」という感覚が生まれ、当たり前度が薄らいでしまう。払い出すと「受験に一番出題される朝日新聞」とか「就職活動に強い味方!日経新聞」とかいう宣伝文句は押し売りみたいでいやな感じである
友人に弦楽器の練習方法を教えてもらった。ウクレレもウードも独学だったので、教わったことで今まで疑問だった点、演奏時の壁を
克服できそうだ。練習すればだが
で、その練習というのは至ってシンプル。弦の決まった場所を、順番どおり抑えて弾く、これをひたすら繰り返すだけ
この練習中「バーナム・ピアノ・テクニック」のことを思い出した
小学生の頃習っていたピアノで使った教本なんだが、4行ぐらいの曲がいっぱい載っている基礎練習曲集である。「シーソー」「深呼吸」などのイメージタイトルで和音、スケール変調などを練習できる曲がズラリと並んでいた。今思うとすごく工夫された練習帳だった、つまんなかったけど。まあ今こうやって楽しみつつ音楽やってることを考えると、かなり役に立ってるんだろう
ピアノをやってた物同士がお互いのレベルを訪ねるとき、最低限の指標となるのは「バイエル」である。その上には○○作練習曲集やら○○のソナチネやらがあるのだが、バイエルだけは共通している。日本でこれまで何人の子供が親に「ピアノやりたい」とせがみ、何人の親が内心嫌がる我が子に強制したかは知らないけど結構な人数だろう。そのうちのほとんどがバイエル経験者だとしたら売上は相当なもんである。まさに隠れたベストセラー
で、僕は思う。実はバーナムもみんな経験してるんじゃないだろうか?僕のピアノの先生はレッスン中に気孔でオーラを送ってきたり、練習もせずに八百万の神が遺した巨石について一時間熱く語ってしまうような人だったがテキストのセレクトは至ってオーソドクスだった。あの先生が選んだバーナムである、みんなが使ってないはずはない。って全然説得力無いか