映画 『Shine a light』

何回かに分けて先週末したこと、起きたことを書き留めておこうと思う。
もしかしたら飛び入りで大きな出来事があるかもしれないけど、その時はその時って事で。
まずは20日昼、ローリングストーンズの映画を観た事(ネタバレ有りです)。
最初の数分間と数曲に一回入る数シーンを除いて、スクリーンはストーンズのライブを映し続けた。いや正確にはストーンズのライブがずっと流れていて、合間にちょっとした舞台裏と昔のインタビューが入ったと言うべきだろう。
感想を言う前に映画館に来ていた客層について。
ストーンズのライブには行った事が無いのだけれど、Web、雑誌、テレビなどの情報を見る限り彼らのライブで30代〜50代くらいのアウトローがうじゃうじゃ来場していて、泥酔者、薬の売人、喧嘩、火炎瓶投擲など五体満足では返してもらえないくらい凶悪な環境であるだろうと想像している。だから今回も映画とはいえ恐ろしい人たちに囲まれること必至、それでダブルのライダージャケットを着こんで駅前でジョア飲んで気合入れて入場したのだが、実際は普通の人ばかりでやや拍子抜けした。確かに数人ロックンロールな方(両方とも内田裕也みたいな風貌の夫婦、タイトなベロマークTシャツにタイトな黒タイツでボンレスハムみたいになっている50代の女性など)はいらっしゃっていたものの、後は「映画は好きですがストーンズというのはどのような方たちでしょう?」といった風情の上品なご夫人、「I can't get know satisfaction♪ くわぁ〜モテたい!」なんて生まれてこの方一度も言ったことの無いはずの美男美女カップル、「あのさ、このギターのキースってギターソロ全然できないらしいぜ。でもリズムはすげーんだって」と10年前の私のように知ったような口を聞いている学生服の高校生男子2人組、その他大勢、どこの映画館にも来ていそうな人たちばかりだった。ちょっとがっかり、ちょっと安心。
話を戻す。おそらくストーンズを前から知っていて、ストーンズを観たいが為に来た人というのは観客のうちの3分の2くらいだと思う。その人たちにとって、ストーンズのライブが延々と流される本作品は最高の映画(ライブ映像)だっただろう。残りの3分の1の人は話題性で観に来た人、定期的に映画を観に来ている人、この人たちにとっては歌ばっかりで面白くなかったのではないだろうか。ビートルズの時代から40年も続いているバンドの歴史もエピソードもほとんど紹介されず、時折流れる昔のインタビューは聞き手を煙に巻くようなものばかり。例えば、

聞き手「ライブ前に必ずすることはありますか?」
キース「目が覚めたら起きる」
聞き手「インタビューで一番よくされる質問はなんですか?」
キース「あんたが今した質問だな」

聞き手「ライブへ向けて気持ちを高めることは大変?あなたはライブするときっと数キロはやせると思うし、歌いたくないときだってあるだろうし、それでも人の前でやるということで云々・・」
ミック「えっとごめん、質問なんだっけ?」

聞き手「ロニー、キースと自分、どっちがギター上手いと思う?」
ロニー「僕さ!」

と終始こんな感じなのである。バンドのことをよく知っていたら笑ってしまうことばかりなのだけれど、知らない人にとっては何が面白いんだかさっぱりな内容なので、つまらなくて当然だとう。事実、途中で席を立つ人が10人くらいいた。

それで、私はというとストーンズの大ファンなので、とっても面白かった。感動した。ライブ以外の要素を少なくし、臨場感に拘ったスコセッシ監督には拍手を送りたい(個人的には最初の「ストーンズがセットリストを決めてくれない!そのせいで撮り方が決められない!きぃーっ!」てのもいらなかったくらいだけど)。
一曲目の『Jumpin' Jack Flash』からラストの『Satisfaction』まで終止歌って踊りつづけるミック、その横でかっこいいんだかかっこ悪いんだか、弾いてるんだか弾いてないんだかよくわからないんだけどとにかく痺れるくらい目立っているキース、控えめだけどソロで魅せてキースとのバランスが抜群なロニー、その後ろで確実にリズムを刻むチャーリー。平均年齢65歳以上、キャリア40年以上。でもやっていることはロックンロールというカッコつけのイカサマ音楽。
ダサダサだ。
でも、カッコイイのだ。ダサダサのイカサマを40年も続けて、今でもダサダサ。でもそんなバカ騒ぎを今でも続けていて、昔と同じバカさ加減。それがカッコイイのだ。
中盤、「カントリーをやろう」とミックが言って『Far Away Eyes』が演奏された。サビのコーラスでミックが手元のマイクをキースに向けて一緒に歌うよう促す。歌い始めるキース。次の瞬間キースはギターから手を離し、ミックの肩に手を回した。一つのマイクで寄り添うように歌う二人。50年近く前、ブルーズで意気投合した二人。ずっとロックンロールをやってきて、時に確執もあったけど今でも一緒に歌う二人。思わず笑顔になって、涙が出た。
次の曲ではバディ・ガイがゲスト参加。思いっきりブルーズを聴かせてくれた。自分たちに音楽を教えてくれた黒人ブルーズマンとの共演にバンドメンバーは子供みたいに嬉しそうな表情。曲が終わった後キースがバディに歩み寄り「プレゼントだ」と言って持っていたギターをひょいっと渡す。ああ、この人やっぱり頭悪いや。でも最高だな。私もストーンズと共演できたら演奏後にウクレレあげちゃうと思う。
2時間のステージはあっという間に終了。満足感と共に映画館を出たら汗をじっとり掻いていた。ふかふかの椅子に座ってのライブ鑑賞だったけど身体は常に動かしていたのと、至近距離で展開されるストーンズに圧倒されたからだと思う。
やっぱロックンロールだよ!以上、感想。
血の巡りがぎゅんぎゅんに高くなった状態で電車に乗り、一路水戸へ。

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