あたらしい命

小生はパンクであるからして全てに反抗し既存の価値観をぶっ壊し己の価値もぶっ壊れ自分さえ楽しければよくて他人のことなどどうでもよいと考え明日をも知れぬ日々を常とするノーフューチャーの徒ゆえ、何人も寄せ付けない危険なオーラを放っている。しかしながらいつでもどこでも赤ちゃんにモテモテであるというのはいったいどういった理由からであろうか。やはり「パンク」の前に「ウクレレ」がついているからだろうか。
昨日も独身男3人で中学時代の恩師宅へお邪魔したところ孫が生まれていて、最初は怖がって泣きべそかいていたのだが5分もしないうちにこちらへ興味を示してきた。暇でモテない30間近の男三人、喜ばせようとおどけた顔したり奇声を発したりしていたところ、すっかりお孫さんも馴れて笑顔で返してくれる。こちらも嬉しくなってさらにわいわいやっていたら立ち上がって時々倒れながらよちよち歩き、行き着いた先はお母さんでもおばあちゃんでもなく何故か私のところであった。さらさらの髪、ぷにぷにの手、無邪気な笑い顔にこちらも思わず笑顔。そしたらいきなり眼鏡を奪われそうになり「や、やめて〜やめて〜」と情けない声をあげるウクレレパンク30間近・独身。
私たちがいる間中お孫さんはずっと元気いっぱいでよちよち歩きに挑戦したりひっくり返ったりしていた。まだ立ち上がっても2,3歩いかないうちに倒れてしまうのだが、頭や膝を打つことはなくいつもバランスよく腰で座る。国体選手だった恩師譲りの運動能力なのかな、と関心する。それにしても、ううむ・・・か、かわいい。
「みんな、まだ結婚しないの?」恩師の奥さんに聞かれて「い、いやぁ〜こればっかりは・・・」としどろもどろな愚連隊3名。前回お邪魔した時と比べ奥さんの表情がはっきりと明るくなっていた。新しい命が張り合いを与えてくれているのだろう。
先生、お孫さんが生まれて幸せですね。先生譲りの運動能力でいつかはオリンピック選手かもしれませんね。僕らは相変わらずつるんでわーわー遊んでばかりであんまり成長してないけど、毎日楽しく暮らしてます。そういえば先週常念岳へ登ってきました。15年前に先生に連れて行ってもらった山です。以前と変わらぬ山々の風景と流れてしまった月日のギャップの大きさに驚き、頂上で長い間合掌しました。先生、今の僕らは先生にどんな風に見えますか?
帰り際、お孫さんが笑顔で手を降ってくれた。こちらもまた笑顔になった。
恩師が亡くなってから2年目の秋だ。