ちょっとそこまで

ふとカフェーで珈琲を飲みたくなった。
朝五時、準備をして家を出る。
目指すカフェーは家から車で20分の河川敷沿い、そこからさらに歩いて30分のところにある。川原に車を停め靴を履き替え、肩掛けに荷物を詰めて歩行開始。片手には水筒、中身は水道水。木の階段を小走りで駆け上がる。
ここ一ヶ月で起きた事を意識的に振り返る。まず、仕事は充実していた。初めての経験が連続してわけがわからなかったけれど、その分開き直って腹を据えたのが良かったのかもしれない。結果としてひとつ、大きな企画を任された。プレッシャーは大きいけれど期待されている感覚は私にとって大きなモチベーションだ。やらなくちゃ、いや、やってやろう。一方で仕事以外の出来事。女にそっぽを向かれた、それも、3人。ひとりはほとんど相手にされなかっただけだからまあいい。よくわからないのは残りの2人。一人は「好きだけれど、神様の言葉に従うとあなたと一緒にいることはできないの」と言って去っていった。もう一人とはここ2週間休日ずっと一緒にいた。先方のリクエストに応えて山に登り映画を観てエスニックを食いインド店で買物し、あははあははとドライブした。ところが昨日やんわりと好きではないと告げられた。理由はさっぱりわからない。どういうことなんだろう。
しっかし振り回されているなあ、おかしいなあ俺。額に吹き出てきた汗をぬぐいながら、ヒーヒー言いながら心の中で笑った。まあ仕方ないか、考えても仕方ない、恨んでも仕方ない。
カフェーに到着。

川沿いの小さな里山、嘗ては山城だったらしい。頂上から少し降りたところにあるベンチ、ここが目的地のカフェーだ。
早速珈琲を淹れる。
ブタンに着火器具付きのバーナーを付け、火をともす。持ってきた水道水をコッフェルに入れ、バーナーの上に乗っける。沸くのを待つ間にドリップの準備、コップの上にモンカフェーのモカをのっける。
程なく湯が沸いた。バーナーの栓を閉めるとガスが止まり、静寂が広がる。遠くで歌声が聞こえる、麓でおっさんが演歌を歌っているらしい。

珈琲を淹れる。


ゆっくりゆっくりと淹れ、ゆっくりゆっくりと飲んだ。誰も来ない。おっさんの歌はもう終わったらしい、しばらくすると6時の時報が鳴った。
まあ、どうでもいいや。そう思った。何が何に対してどうでもいいかはわからないけど、とにかくどうでもいいなと思った。何が何に対してかは考えないほうがいいような気がする。しかし珈琲うまいなあ。さて、帰るか。

さて、仕事行こう。


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