今、何歩?今、南方

Maktab2007-01-07


この時期、成人式前後はよく大雪が降る。
九年前、前年に降ったような大雪がまた来るんだろうかと心配しつつ、迫りつつあったイングランド遊学に心踊らせていた。渡航に備え初めて革靴を買った。
八年前、凍った水分がきらきら光る中電車に乗り試験を受けに行った。極度の緊張で鼻血が出ていた。
七年前、ハラブというところに行くからいろいろ準備しなきゃあ、わけもわからぬまま切符を買ったり筋トレしたりしていた。雪のことは覚えていない。
六年前、カレー屋に仕事を見つけた。事務所に篭っても銭にならん、ベンチャーさんやジャーナリスティックまがい、研究研究なんてのとも距離を起きたくてしかたなかった、レッツ逐電。雪の日に坊主頭にした。
五年前、金がない、金がないせいで心が荒んだ、彼女を烈しく揺さぶってうわあああと叫んだら彼女は怯えて震えた、雪の少ない年だった。
四年前、ジェッダで巨大なケーキを食いながら絶対存在てあるのかもなあ、対象には正面から向き合わなくちゃいかんよあな山ちゃんなんて思いつつケーキのおかわり。雪なんて降りゃしない。
三年前、ハラブで猫に噛まれ狂犬病になっちゃうかもと心配になるも最大の杞憂はフィールド調査の報告をどうまとめるかというこの一点。無駄に過ごした半年の帳尻あわせ。滅多にない降雪に出くわし学生達が大騒ぎしていた。
二年前、前年の帳尻合わせのツケ、寒い借家で不眠不休の原稿作り。でもちょっと昼寝。彼女がご飯作ってくれた。暖かかった。
一年前、資料作りとルーチンの日々、正月に来た手紙を見てそろそろ職探しするかと考える。また電車が雪で遅れたらしい。弱いなあ都心部は。
今年、日本はまた大雪らしい。らしいというのはここは華南地方で春のような陽気だから雪なんて想像もつかないから。シングルステイには大きすぎるベッドで昔を回顧中の次第。
色々あった、喜怒哀楽愛憎離苦怨憎会苦、愛しているよさようなら、またいつかねさあどうだろう。そんなことが雪よりも降り積もりそして溶けた。
気がつけばまわりも私もずいぶんと変わってしまった。でも靴は九年前とおんなじである。