飲酒レヴェラーズ・ミッション

とあるアカデミックなコミュニティで「東海道線だろうが東横線だろうがビール飲みたくなったら飲めばいいのだと思います。なぜならそのビールはとてもおいしいでしょうから」と発言したところ「そんなことが許されるわけがないだろうこの常識知らずめ」「なんでそんなこというのかさっぱりわからない」「お前は阿呆か?藤山寛美か?」「お前のそばに自分の子供を連れて行きたくない」「そんなことだからウクレレを一緒に弾く友達が誰もいないんだ」「子供を留学させるならお前の家よりアメリカが安全だ」とまあ、非難轟々であった。
私の発言を批判した知識人たちの見解は、要約すると以下の通りである。

  • ウマいからという理由だけで在来線で飲酒するのは、禁忌。
  • 特に東海道線でのビールは禁忌。なぜならばオヤジ路線まっしぐらなため。
  • 関連して、老境を迎えた御仁であれば東海道線の場合のみ許容(東横線では忌避)。
  • 例外として、在来線であってもグリーン車両でのビールは忌避に近い許容
  • なお南武線青梅線でウィスキーを飲むことに対しては、判断を留保する。
  • 新幹線でのビールは、許容。
  • 「いかくん」や「竹輪」を伴うビール飲酒は、ヤバイ。
  • グリーン席購入時の携帯スイカはかっこいい☆

いやはや全く世の中というものは著しく変化するものである。確か2週間ほど前、子供に夢と感動を与えるのを生業とする職業野球選手達が、公衆の面前でビールを飲み散らかし撒き散らかし狂乱。真実の伝達に使命感を燃やすジャーナリスト・アナウンサー・カメラマン達を全身酒まみれにした上プールへ放り込み「おめでとー!」「やったぜー!」と喜ぶ姿はまさに酒乱者の集いであったが、なぜこんなことを私が知っているかと言えばこの狂った宴が全国ネットで放送されていたからである。ところが今の日本では、電車の中で飲酒は一部の例外を除き是相成らぬという。この2週間の間に飲酒について大きなパラダイムシフトが起きたようである。こいつはしまった、やれ言葉がききとりづらいだの、やれスーツが派手すぎるだのと理由かこつけて筑紫哲也News23を見るのを怠ったのがいけなかった。コモン・センスと掛けてエナメルの靴。常に磨いておかないとね。
さて上記した知識人の見解であるが、なかなかに解釈が難しい。パラダイムシフトの結果電車内での飲酒は忌避事項となったわけだが、幾つかの例外の存在によって飲酒可能な環境は残されている。どうやらその例外には列車の等級および飲酒者の年齢・社会的ステータスが関係するようである。
まず列車の等級について。グリーン車、新幹線など、乗車券の他に特急券/グリーン券などの特別券が必要な列車では飲酒が許可されるようである。この点から、ある程度裕福な人間でなければ列車での飲酒は許されないことがわかる。特別車両で飲酒をすることは一種の社会的ステータス、プラスイメージである。
次に年齢について。ある程度の年齢に達している、あるいは達しているような容姿をしている場合、列車の等級を問わず飲酒が許容されるようである。またここでいう「年齢」とは法律の定める飲酒許可年齢「満20歳以上」よりも上、50〜80代を指すと思われる。また、年齢による飲酒の許容にはどちらかというと負のイメージがある。特別車両で飲酒する夢は叶わず、わずかな稼ぎで口に糊する日々、理不尽な労働後の帰り道、ググッと缶ビール飲み干す在来線、マナーなんか知らない、今日生きるのに精一杯。
以上の解釈から察するに、列車内での飲酒が許可されるのは、

  • 特別車両に乗れるようなアッパークラス
  • 労働者・窓際サラリーマン風の中高年

この2種のどちらかに属する人間ということになる。「公衆の面前では飲酒しない」というマナーを作り、それを破って飲酒する貧民を卑下。その一方で自分達は金持ちだけが入れるスペースを作り、ゆっくりとビールを嗜む。いやはや全く、もはや日本は階級社会ですよ奥さん。
やっぱりいつどこで酒飲もうと勝手である。金持ち知識人の横暴なんかに惑わされる必要はないのだ。

しかしながらひとつだけわからないことがある。それは列車におけるビール飲酒の際のおつまみについてである。「いかくん」や「竹輪」はダメなのになぜスイカの携帯は許容されるのだろうか。スイカ、言うまでも無く「よっちゃんイカ」のことだが、なぜよっちゃんイカだけがOKで他のおつまみはNGなのか?今は不明だが、絶対に解明しなければならない命題である。なぜなら、この点を解明しなければ金持ち知識人たちと闘うことはできないからだ。彼らの思うがままにされないためにも、俺達はよっちゃんイカの謎をなんとしても解かねばならない。さあ虐げられた俺達よ、今こそ立ち上がるのだ!ところで誰だ俺たちって。