かっこいいドライバー

一般道における自動車の運転で最も高度なテクニック、それは「譲る技術」だと思う。
横断歩道の歩行者、交差点の右折車、車線変更。路上には譲る機会が溢れている。
譲らないことによって発生する渋滞、逆に、譲ることによって発生・解消する渋滞はあるのか。後続車の有無、対抗車線の混み具合、信号は時差式か、右折信号の有無、ありとあらゆる要素を瞬時に比較検討した上で、ここぞという機会に譲りたいものである。
誰にでも譲るというわけではない。電話している、フロントガラスにぬいぐるみが山積している、赤ん坊を抱いている、犬が運転席から顔を出している、一時停止をしない云々。事故を起こしそうな要素のある車にマナーを以って接しても意味が無いし、前方で事故を起こされて玉突き被害に遭うのも馬鹿馬鹿しい。そうした点まで瞬時に判断して、譲りたいなあと思っている。
譲られる側になった時もしっかりお礼したい。お辞儀したり手をあげたり。ハザードランプをつける人がいるけれど、次の動きが読めないのであれはやめてほしい。
今日、店の駐車場から国道に出ようとしていたジープに道を譲った。両方の車線が混んでいてしばらく待っていた様子、こちらは止まってパッシングしたのだが、対向車が止らない。それどころかスピード上げて入れさせまいと加速する。4台ほど通り過ぎた後でようやく譲る車が現れ、ジープは私の前を右折。その時である、痩せ型で初老の運転手、ニヒルな顔でこちらに視線を投げかけつつ、サッと私に指が差された。一連の仕草はこう言ったのである「Thx!」
カッコイイ!
臆面なくあのような立ち振る舞いをしてみたい。あんな人になら何度でも譲りたい。そんな風に思いつつ、黄色車線の道でうっかり原付を抜かしそうになった休日であった。