FLASHを聴いて

ハイロウズのベスト盤を聴いている。

FLASH~BEST~

FLASH~BEST~

突然の活動休止宣言。
結成されてからずっと、心底ロックンロールを、自分たちのコンサートを楽しんでいるように思っていたから、やっぱり最初は驚いた。ただ、なんとなく予感はしていた。「レコードは演奏していた瞬間を切り取ったものでしかない」と常々言っていた彼らがライブDVDを出したりベスト盤を発表したり、「変だなあ」と思っていた。
このベスト盤の発売が発表された時「ハイロウズ初のベスト盤」と発表されていた。思わず笑ってしまった、「初のベスト盤」。ベスト盤が何枚も出るのか?初なのにベスト、次はベスト盤第2番か、日本語の乱れが叫ばれて久しいが、全く以ってトートロジー。「全員皆殺しだ!」と同じくらい変である。スピッツが数年前のベスト盤を廃盤にしたのもよくわかる。
閑話休題ハイロウズは突然「活動休止します」と宣言して、ぴったりと活動しなくなってしまった。彼ららしいとしか言いようの無いやり方。
いつかヒロトが言っていた
そうだよ,僕らはドリフターズだよ.小学校卒業したら見なくなるかもしれないけれど,また新しい小学生が来るんだよ.ロック好きな人は必ずそこにいる.僕たちは今目の前にいるお客さんたちを連れてどっかに連れてこうとは思わないんだ.僕らはそこでずっとロックやってて入れ替わり,立ち替わり見に来ればいいんだと思う.ファクトリー
僕は子供の頃「ドリフ禁止」だったから言葉の意味は本当はよくわかってないのかもしれない。けれど何となくわかるのは、ドリフは「下らない」とか「マンネリ」とか、何を言われようとひたすらコントをやっていたということだ。そしてハイロウズもドリフでいることを、心底楽しんでいたいみたいだった。
そんな事を思い出しながらベスト盤を聴いてみて、1つ気付いたことがある。楽曲のどれもが、オーディエンスには全く語りかけていない点だ。今聴いている限りでは、聞く側に対してメッセージを送ろうという意図があったり、語りかけていたりする曲は1つも無い。
彼らの歌詞はよく、メッセージ性が強いとかストレートな歌詞とか言われてきたけれど、それはあくまで1解釈に過ぎない。むしろ、楽曲の意図をを紙面などで訊かれるのを嫌っていた。曲は曲なんだから、楽しみ方はそれぞれあっていいじゃん。そんな事もどこかで言っていたような気がする。
今回の休止宣言もその延長線上なのかもしれない。いろいろ事情はあるのだろうけど、そんなことは本質、どうでもいいことなんだと思う。見世物小屋でいつも勝手にやっていたドリフのコントを、面白いと思った人が勝手に観ていた。それがなくなっただけ。コントが目的なのだから、荒井注がなんで辞めたのかとか、そんなのはどうでもいいじゃないか。そんなことはどうでも。キレイ事を言って「さよならライブ」みたいなことをするより、よっぽどいい。
ただ、やっぱり寂しい。タワレコに行ったら、特設コーナーが設けられていた。過去の作品、ビデオ、インタビュー掲載雑誌などが並べられていたのだけれど、自分と同じくらいの歳で、どことなく服装がぎこちなくて、少しコミュニケーション能力に難のありそうな人たちが何人か、その前に立ち尽くしていた。さんざん走り回った野原が、ある日分譲住宅に変わってしまい、寂しそうにその風景を眺めているみたいな感じだった。