ゆらゆらと 悪い予感に 死の匂い

研究室からの帰り際に目に付いたのが一枚のCD、「1、2、3 SOLEILS」なるタイトルのライブ音源で、フランスから。アルジェリア(アル・ジャザーイ)の民族音楽ライ、そこで王様と冠されるハレド、「小さな王様」のフォーデルラシッド・タハの3人が99年にパリで公演した際のもの、以前より聴きたいと思っていたが、なかなか手に入らなかったのが置いてある。持ち主の友人にメール一通入れ失敬。家で試聴いたら久々のヒット。ゆらゆら帝国ゆらゆら帝国3」昨年3月に聴いた以来のもの。
アラブ、特にシリアの街頭で流れるポップスは、政府のためか情報のためか、どうものめりこむようなものではなし、それで聴かずに流すのみだったが、今回は違う。形容は不得手だが、一言で言うなら緊張感。張り詰めたような勢いがあった。
宮本輝錦繍」の一節「生きていることと、死んでいることとは、もしかしたら同じことかも知れへん。そんな宇宙の不思議なからくりを、モーツァルトの音楽は奏でているのだ。星島さんはそういわはりましたなぁ、(中略)星島さんの言うた言葉の意味を考えつづけて来て、いまそれがわかりました。(中略)モーツァルトは、きっと、人間は死んだらどうなるのかを、音楽によって表現しようとしたんですよ。」
不思議な緊張感とは、勢い、生と死か。使い馴れた言語という伝達方法では届けられない現象を伝える手段としての音楽。これがライブ音源だったのも関係しているかもしれないけれど、今まで聴いたアラブポップスとは違っていた。宇宙のからくりを創り出し、全知であるアッラー、それをそのまま感じ取ろうとする真正主義スーフィズム、井筒がクルアーンの後半で見た衝撃、おそらくは同じ緊張感、だとすれば、どうしてアラブ音楽にそれが見つからないだろうか。
ある友人の言葉を思い出した
「ロックが好きでロック以外は音楽じゃないみたいな言い方する奴居るけどちがうよな。いい音楽はジャンルが何であってもいいんだから。」

錦繍(きんしゅう) (新潮文庫)

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ゆらゆら帝国 III

ゆらゆら帝国 III

1,2,3 Soleils

1,2,3 Soleils