砂糖に群がる蟻

甘いものの類は洋菓子・和菓子問わず大好きだ。
けれども菓子屋に行列を作って並ぶ様は人間にとって最も醜い姿の一つだと思う。
嗜好性があり、感覚を麻痺させると言う意味において砂糖は人間が最も手に入れやすい麻薬である。「糖」だから人間に必要不可欠な栄養であることは間違いないが、甘いものを食べる時に「栄養を補う」という目的を持っている人はいないだろう。だから甘いものを食べるというのは生命維持に必要ない欲を満たす行為で、2度寝や自慰とあんまり変わらない。
まあ時々甘いものを食べることが生命維持に直結している人もいる。ただそれは栄養が無くて死ぬというわけではなく、精神的苦痛を紛らわす為に過食するというタイプである。アルフレッド・ヒチコックとか。まああまり人に言いたい話ではない。こっそり食べていたい。
ところが今、甘いものを食べることは「おいしい」という理由だけで全肯定され、楽しくお洒落な生き方であるかのような言説が生まれ、私も食べてみようかしらん、なんて人が巷に溢れている。結果、ひとたび味が評判になるとずらりと大行列である。わが人生は甘味を食すことにあり、インスリン打ってでも甘味1日3食これを必ず食す、というような求道者はともかく、ただなんとなく並んでいる人々と言うのは、なんとも思慮が無いというか無哲学というか、欲望丸出しで資本主義的というか、とにかくだらしがなくてかっこ悪いと思うのだ。
というような話を方々でして廻ったら「お前は阿呆か。たかが甘味で何をえらそうなこと言っているのだ、このオタンコ茄子!」と叱責され、「なにその考え、きもーい」と嫌われてしまい誰からも電話・メールが来なくなってしまった。悲しみに耐えられなくなった私は新宿のクリスピードーナツの列に並び1時間後にこれを購入。家でガッツリ食べることで欲を満たした。そして一言「やっぱ自分らしく生きなくっちゃね!」
ゲップ。