さらば親不知の日々 その2

昨夜も痛みのせいか良く眠れず、6時ごろ起きて枕もとの痛み止めを飲み、副作用のおかげでなんとか2度寝。
どろどろのお粥を食べて検診へ。車で30分。
途中、電話があった。車を止めて出るとひでさん&た〜ちんで、心配で連絡をくれたのだった。嬉しいなあ。二人は代々木公園にいてこれから路上やるとか。いいなあ、行きたかった・・・。
朝日を浴びながら、川沿いの桜並木を北へ北へ。道すがら、親不知との日々を思い出した。
昨日までに上下左右、4本の親不知を全部抜いた。4年前に患うまでは、親不知とは無縁だと思っていた。
はじめに抜いたのは右上で、確か7月。ひどく炎症を起こして口が開けられなくなり、駆け込んだのが小田急相模原「しのはら歯科医院」だった。レントゲンを見せられて驚愕した。4本の親不知があべこべな方向に生えていて、特に下の2本はひどい。歯茎の下で、巨大なのが顔の真ん中に向かって生えていた。一本一本抜いていきましょうということになって、まず炎症を起こした右上を抜いた。痛くはなかったけど血がたくさん出て、ぽっかり穴が開いたところに米粒が詰まって困った。
しばらくして左上も抜いた。これも痛くなくて、困ったのは米粒が詰まることだけ。
なんだ、親不知治療って楽なもんだ。しかもしのはら歯科医院、歯石も取ってくれるし、歯の磨き方・フロスの使い方も丁寧に教えてくれるし、今後の治療方針も明確、こちらの都合や意思もしっかり尊重してくれる。毎回、行くのが楽しかった。人は歯医者を嫌だ嫌だというけれど、なんてことはないじゃないか。
半年かけて虫歯と歯周病を治した後、左下を抜いた。
いつもの先生は助手になり、口腔外科の先生が執刀した。何本も麻酔注射をして、歯茎を切開し、出てきた横向きの歯を砕き、電ノコで切り、ひっぱり、押しこくり、グリグリし、また砕き・・・長い長い時間をかけて引っこ抜いた。麻酔のおかげで痛くはなかったけど、何人もの大の大人が僕の口の中をガンガンと引っ掻き回す様は、異様で怖かった。
その日から1週間、顔の左半分が風船みたいに腫れあがった。3日ほど、痛くてよく眠れなかった。麻酔の後遺症も残り、しばらくは口の間から水がダダ漏れする始末。
甘かったです。やっぱ歯医者って怖いとこなんですね。
できればもう1本も抜いてしまいたかった。ところが東林間から引っ越してしまった都合、しのはら歯科医院とはそれっきりになってしまった。先生に引っ越す旨を伝えると「いつでも紹介状書くからね、こっちに来たらまた遊びに来てね」と言ってくれた。とても気さくないいお医者さんだったなあ。
その後歯医者へは行かずじまい。最後に残った一本は右下あごの歯茎の中に埋まったまま。時々こめかみから肩にかけて鈍い痛みが出ることがあって、「ああ、これは親不知のせいなんだろうなあ」と思ったけれど、マッサージしたり頭痛薬飲んだりして誤魔化してきた。
それが先週、ついにごまかせなくなってきた。痛い、痛い、痛くて仕事にならない。奥歯を噛むと「ミシミシ」と変な音がする。こりゃいかん。そこで金曜日、最寄の歯科医に行って診てもらった、すると、
「す巻きさん、こりゃあダメだ。歯科医じゃあ抜けません。口腔外科紹介してあげますから、そこで抜いてきてください」
というわけで紹介してもらったのが総合病院の口腔外科。週末に何かあると嫌だったので、さっそく土曜に朝一で訪問した。
すると、
「す巻きさん、こりゃあ根が深いですよ。しかも神経にかかっちゃってる。抜いたほうがいいですね」
「ですよね、抜いてください」
「はい、じゃあ今日抜きましょうか?」
「!!??」
「炎症もあまりないし、抜けますよ」
というわけで、心の準備が出来ないままに手術がはじまり、何本も麻酔注射をして、歯茎を切開し、出てきた横向きの歯を砕き、電ノコで切り、ひっぱり、押しこくり、グリグリし、また砕き・・・またしても長い長い時間をかけて引っこ抜いた。左を抜いた時から4年、歯が成長していたため前回よりも手がかかった。時間にして約40分。歯を砕いた時の骨の匂いが、嫌だった。
帰りの車、運転しているうちに麻酔が切れて、鈍痛が右顔と右肩に出てくる。鈍痛はやがて激痛になり、運転していられなくなった。途中スーパーの駐車場で鎮痛剤を飲み込み。ほうほうの呈で帰宅。痛みに耐えながら寝続けた。ひと段落して起きると、顔が膨れ上がっていた。
そうやって、昨日までに4本全ての親不知を抜いた。
道沿いの桜並木。川の向こう側には山々が連なっていて、麓から上り始めている桜前線がきれい。歯さえ痛くなければいつもの美しい季節なのになあ。イテテテテ。
口腔外科の先生に消毒してもらい、優しい言葉で元気付けてもらった。いい先生だなあ。
帰宅して、流動食みたいな昼飯を食べて、寝て、流動食ディナーを食べて、寝た。
まだまだ腫れは引かない、痛みもある。明日がピークらしい。
そういえば長州力が昔「アゴが痛い」という理由でメインイベントを欠場したことがあった。当時は絶対ずる休みだと思ったけど、ホントに痛かったのかもしれないなあ。
閑話休題、これで痛みが引いて腫れが直ったら、もう親不知との生活はお別れだ。これからは炎症や肩こり、頭痛に悩まされることはない。そう思うとちょっとウキウキしてくる。
直ったら5月の自然で遊んで、ウクレレ持って出かけよう。何かいいことあるかな。