ジャイアント馬場vsスタン・ハンセン

全日本プロレス 東京体育館大会 1982.02.04、PWF世界ヘビー級選手権試合。
チャンピオン・燃えるジャイアント馬場に最強の挑戦者が現れた。その名はスタン・ハンセン。
恐怖の首折り技「ウエスタン・ラリアート」で数々の強豪を打ち破り、馬場の愛弟子たちを葬り去ってきた危険人物である。一方の立ちはだかるジャイアント馬場全日本プロレスの総帥として長年トップに君臨し続けた馬場も当時既に44歳、肉体的な衰えに加え、アントニオ猪木の格闘技路線と比べマンネリと揶揄され、限界説が囁かれていた。この試合で負ければもう後が無い。
選手入場、上田馬之助をセコンドに従え、殺気立っている。一直線にリングへ向かい、会場にロングホーンをとどろかせる。左肘のサポーターを撫でる動作は恐怖のラリアートを予感させ、テンガロンハットの下には不適な笑みさえ浮かべている。
対するジャイアント馬場は泰然自若、表情を変えずにのっしのっしとリングへ上がる。王者の余裕か?それとも負けを覚悟しているのか?
試合開始のゴングが鳴る。

体当たり合戦、二人とも倒れない。ロープの反動を利用して再び突っ込んでくるハンセン、ここで馬場の16文キック一閃!強烈な角度でハンセンにヒット。会場は一気にヒートアップ。意外な攻撃ひるんだハンセンだが、負けじとエルボードロップを叩き込んでいく。重そうな一打一打にどよめく会場。だが一瞬の隙を突き馬場がハンセンの腕を極める。そして徹底した腕折り攻撃。鉄柱やロープも巧みに利用しハンセンの左肘を痛めつけてラリアートを封じる作戦に出た。馬場の真骨頂、インサイドワークが冴え渡る。

一方のハンセンも足への攻撃で馬場のキックを封じようとするが、馬場は絶妙な返しで腕殺しに反転させる。不器用に見える巨大な馬場が寝技でハンセンを翻弄。そして伝家の宝刀、32問人間ロケット砲が炸裂!!倒れるハンセン。しかし不沈艦も負けてはいない、馬場をロープに振り替えし構える、ラリアートか?悲鳴があがる館内。ここはフェイントでショルダースルー。だが再びロープに振り走りこむ、出た、必殺のウエスタンラリアート
たまらず場外へ逃げる馬場。追いかけるハンセン。立ち上がりはしたがグロッキー状態の馬場へエルボーの嵐。通常であればこれで勝負ありだっただろう、しかしそこは世界のジャイアント馬場、意識を取り戻し強烈なダブルチョップで反撃。腕殺しの効果でラリアートの威力も半減したのであろう。ハンセンと馬場、場外での打撃戦となる。
ここでアクシデント発生。場外戦を止めに入ったジョー樋口レフェリーが馬場とハンセンの間に挟まれ気絶してしまった。ここぞとばかり大暴れするハンセン。セコンドが止めにはいるも次々とラリアートで粉砕。両者反則負けのゴングが打ち鳴らされる、騒然とする会場。
事態を収拾させたのはやはり馬場だった。暴れるハンセンを捕らえ、再び16文キック。勝てぬと悟ったハンセンは花道へ逃げ、「ウィーッ!」と叫んで控え室へ消えた。
レフェリーへの暴行による両者反則裁定。よって王者は移動せず、選手権者ジャイアント馬場、最強挑戦者スタン・ハンセンを退けての防衛を果たした。
決してすっきりした勝ち方ではなかったが、馬場はハンセンからベルトを護りきった。同時に強烈な打撃と巧みな関節技を見せつけ、会場を大いに沸かせ、見事に限界説を吹き飛ばした。
馬場さん、最高にカッコイイ!